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2006年 02月 07日
平安文学を専攻している後輩を引き連れて飛鳥をぶらぶら歩いたことがありました。
万葉集を学んでいた私は、のっぺりと田畑が広がる景色に心を躍らせていたのですが、一方の後輩は何やら手持ち無沙汰のご様子なんですね。 そこで私が旅の風情を盛り上げようと公園の高台にのぼり、万葉の歌を一人ごちますと、横にいた平安文学専攻学生は実に率直な質問を投げかけてきましてね。 「あのぉ、センパイ。ボクたちはここに何を見に来たんですか?」と。 見るもの?そんなものはないじゃないか、と私が真顔で答えると、その後輩はキョトンとするんです。 そこで改めて周りを見てみると、なるほど何にも無い。田園と団地。チェーン店の看板。 その時になって私は、ははーん、こういうのって特殊な世界なんだな、と自身の身の置き場をはじめて知ったのでした。 「万葉ロマン」とう語があります。 そう言えば「源氏ロマン」とはあまり聞かないですね。 万葉好きは、発掘したりはしません。歌が生まれた場所に立ち、そこで歌を詠むだけでいい。 ちょっと奇特な世界。こりゃシャーマニズムの一種なんかなぁ。 とにかく、ただの田畑、ただの住宅地に飛鳥の世界を想起する“技術”が普通の人には理解しがたい世界だ、ということは、おそらく間違いなさそうですね。 作家阿刀田高が古事記世界の痕跡を求めに全国を飛び回る。 タクシーの運転手に「へ?お客さんあんなとこにわざわざ行くの?」と失笑されながらも、神話の舞台を歩く。到着しても「ふーん、これがそうなの」という程度のものばかり。ところが「おおらかな気持ちで、確かなものは確かな歴史として、突拍子の無いものはイマジネーションの産物として」大いに古事記世界を楽しんでいるのですね。 これぞ「ロマン」!私は大いに賛同します。 (に)
by asadoku
| 2006-02-07 17:37
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